掌蹠膿疱症とうい病気をご存知でしょうか?歯科疾患と関連があると病気と言われてはいますが、当院では日常診療で目にする機会は多くはありません。しかし、現在日本にはおよそ13万6千人の患者さんがいると考えられます。今回は歯科医師の視点から掌蹠膿疱症について紹介します。
掌蹠膿疱症とは
掌蹠膿疱症とは、手のひらや足のうらに水疱や膿(無菌性)が繰り返し生じる慢性難治性の炎症性皮膚疾患です。日本を含むアジアで多く見られると考えられています。症状としては、皮膚の痛みや痒みに加えて、手という人に見られる部位に症状が出るため精神的にも悪影響を与える疾患です。また骨や関節に痛みが生じる掌蹠膿疱症性骨関節炎を合併(約30%)することもあります。
原因
掌蹠膿疱症の原因は解明されていないことが多いですが、喫煙や扁桃炎、副鼻腔炎、便秘、歯科疾患、金属アレルギーなどが原因と考えられています。特に歯科領域では慢性的な歯科疾患(う蝕や歯周病、根尖性歯周炎)や金属アレルギーとの関連が指摘されています。
治療
金属アレルギーを疑い金属を除去することにより30%程度の患者さんの症状が改善したとの報告があります。また掌蹠膿疱症の患者さんの70%以上が何らかの慢性的な歯科疾患(虫歯や歯周病、根尖性歯周炎)を抱えており、標準的な歯科治療によりその半数以上の患者さんで皮膚症状の改善が認められたとの報告もあります。歯周病は国民病とも呼ばれ成人の約80%が罹患していると言われています。虫歯と違い症状が自覚しにくいこともこの病気の怖いところです。また過去に大きな虫歯になり根管治療を受けた方もいらっしゃると思います。根管内を完全無菌化にして治療を完了することは難しく、根管治療後に慢性的な感染が起こり根っこの先に膿が溜まることがあります(根尖性歯周炎)。この根尖性歯周炎も自覚症状がないことがあります。そのため歯科医院での定期的な診査(レントゲン撮影など)が必要です。
現在では、金属を除去するよりも歯科疾患の治療の重要性が報告されています。そのため、金属を除去するよりも前に歯科疾患(虫歯や歯周病、根尖性歯周炎)の治療を優先して行い、それでも症状が改善しない場合は、皮膚科医と連携し金属除去を検討します。
まとめ
標準的な歯科治療を行うことにより、掌蹠膿疱症の症状が改善する可能性があります。歯科医院を受診するのは時間もかかりますし大変だと思います。まずはう蝕や歯周病、根尖性歯周炎等がないか診査から始めてみませんか?
※ 医師からの紹介状がある場合はご持参ください
参考文献
Monthly Book Derma. No. 359 掌蹠膿疱症 Bench-to-Clinic
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