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インプラントと義歯を組み合わせた新しい入れ歯(インプラントオーバーデンチャー)について

 今回は新しい入れ歯の形「インプラントオーバーデンチャー(IOD、IARPD)」についてご紹介します。一般的に少ない本数の歯の喪失であれば、ブリッジやインプラントで歯を補うことができます。しかし、奥歯で3本以上連続した歯を喪失した場合は入れ歯を選択することになります。

 

 

 入れ歯でお困りの方は当院にも日々来院されています。

 

「固いものが好きだけれど、噛むと入れ歯が痛くて食事が辛い」

「歌を歌ったり、おしゃべりしていると入れ歯が落ちてきて困る」

「大きく笑うと金属のバネが見えるのが嫌」などなど

 

 入れ歯は様々な歯の欠損に対応できるというメリットがある一方で、ブリッジやインプラントと比較すると、咀嚼機能や発音、審美性に劣ることがあります。そして多数の歯の喪失に対してインプラント治療を選択すると費用がかなり高額になってしまいます。そこで注目されているのが少数のインプラントと義歯と磁石(マグネット)等を組み合わせたインプラントオーバーデンチャーです。

 

 

 特に下顎の総入れ歯は常に患者さんだけでなく我々歯科医師を悩ませています。上顎の総入れ歯はその形態上、吸着が得られやすく安定することが多いのですが、下顎の総入れ歯は違います。動きやすく不安定で食事や発音が難しいケースが少なくありません。世界的に見ても同様です。そのような中で2002年カナダでの会議でMcGillコンセンサスが発表されました。それは、

 

「下顎の総入れ歯の治療では2本のインプラントを組み合わせて行うことが第一選択である」

 

 つまり不安定な下顎の総入れ歯を安定させるために2本という最小限のインプラントと磁石等を利用する治療法の推薦です。これは外科的な侵襲と費用を抑えた効果的な治療法となります。もちろんインプラントの本数は多い方が安定しますが、この治療法のコンセプトでは多数のインプラントは優先されないと考えています。この治療法は現在まで臨床で広く行われ、総入れ歯だけでなく部分入れ歯の安定にもでも役立っています。

 

 

 磁石の応用に関しても近年では研究が進み、日本磁気歯科学会より「歯科用磁性アタッチメント装着時のMRI安全基準マニュアル」も発表されています。インプラントオーバーデンチャーが身近になっていると考えられます。

 

 

 皆さんもご存知のように歯を失うと顎の骨が徐々に痩せていきます。現在では歯を支える顎の骨である歯槽骨の吸収を防ぐ目的でインプラントを入れることもあります。インプラントオーバーデンチャーは最初から総入れ歯の方だけでなく部分入れ歯の方にも有効です。部分入れ歯から総入れ歯への移行を考慮し、部分入れ歯の方も骨を守りながら戦略的にインプラントを入れることもあります。

 

 

 人生100年時代。介護時代を考慮すると歯科の分野では入れ歯の活躍が予想されます。通常の歯の形のままのインプラントですと、メンテナンスをせずにいると歯(上部構造)が外れて口腔内を傷つけたり、以前はできていた清掃(フロスなど)が難しくなってしまうことがあります。そこでインプラントオーバーデンチャーに設計を変えることで、義歯が安定するだけでなく、片手で取り外しも可能となり口腔内の清掃が簡単になります。介護を見据えた上で、より快適に食事や会話を楽しみ、清潔な口腔を維持するための選択肢としてインプラントオーバーデンチャーの利用がより広まると考えられます。ご興味がある方はお気軽にご相談ください。

 

 

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